IBD患者ではカンジダ菌の感染率はヤバイというお話と対策
私はIBD(炎症性腸疾患)の患者で免疫抑制剤を過去に使ったことがあります。
免疫抑制剤は名前の通り、免疫を弱めるものなので、菌に感染しやすくなります。
したがって、今後、免疫抑制剤を使うかもしれない私自身や、今使っている方々が気になるかなと思い、菌のお話を記事にしました。
また、IBD患者の方以外でも参考になるかと思いますので、読んでいただけたら嬉しいです。
では、スタートです。
まずカンジダ菌とは?
まずは軽くまとめて説明すると↓の感じかと思います。
・真菌(いわゆるカビ)
・腸内細菌で言うところの日和見菌(中間的な役割の菌。腸内環境が悪いと悪玉菌化。)
・腸管を中心に体中のいたるところにいる
・有名かつ感染率が高いのはカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)
カンジダ菌は変化する
カンジダ菌はpH(ペーハー)でその様相を変えます。
(ざっくりまとめてみたものなので、間違っていたらすいません)
段階1:酵母状態
弱酸性環境(pH=4〜6.5)では、体に何もしない無害なやつ。
段階2:菌糸状態
アルカリ性環境(pH>7)では、あらゆる細胞に入り込み、毒素(Candidalysin:カンジダリシンなど)を出す。
段階3:バイオフィルム形成
複数の菌を集めて、バリアを貼って、除菌しづらくなる。
そして、さらにpHを上げるアンモニアを出す(便が臭くなる)。最悪状態。
カンジダ菌の悪影響
カンジダ菌はカンジダリシンという毒素を出します。
まずカンジダ菌の病気として、代表的なのは性器のカンジダ症や、口腔カンジダ症です。
が、IBD患者にとってさらに恐ろしいのが、カンジダリシンが
細胞破壊と炎症を引き起こす毒素(*1)ということです。
(NLRP3インフラマソームというタンパク質の複合体が炎症を引き起こします)
他にもやばいのがいろいろ…
・バイオフィルムの状態となった場合にはリーキーガット(腸から血管に異物が漏れ出す)を引き起こす
・カンジダ菌自体が鉄を奪い利用(=貧血を誘導)
・カンジダ菌が出すアルビノースによる糖以外からの糖(グルコース)の生成を阻害(糖新生の阻害)し、エネルギー代謝を阻害
・カンジダ菌が出す酒石酸によるTCA回路の阻害(=エネルギーが生み出せない)
・カンジダ菌が出すシュウ酸によるミネラルの吸収阻害
ありすぎて、おそろしや…
*1 https://www.nature.com/articles/s41467-018-06607-1/
IBDのカンジダ菌感染の件数
ここで研究(*2)のご紹介です。
14研究を分析し、1524名のIBD患者(免疫抑制剤を使用している人が多い模様)の
感染菌を調べたところ、
もっとも多いのがカンジダ菌の感染数で903件だった。
(感染者数ではなく、カンジダ菌が見つかった件数。一人の患者で複数種類のカンジダ菌に感染した場合はその種類数分だけカウント。)
やばい…
*2 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5980782/
免疫抑制剤について思うところ
免疫抑制剤は免疫を抑えるので、もしかしたらカンジダ菌による炎症を引き起こす作用も無理矢理抑え込んでしまっていて、免疫抑制剤をやめた瞬間に襲いかかりそうで怖いなと思いました。
↓のイメージです。
1. 免疫抑制剤を使う
2. カンジダ菌に感染
3. カンジダ菌が炎症を誘導しようとする
4. が、免疫抑制剤により、免疫の反応が薄いので炎症は起こらない
5. 免疫抑制剤をやめる
6. カンジダ菌による炎症の誘導が抑えきれず、炎症が再発
7. また免疫抑制剤が必要になる
こうなると、免疫抑制剤から抜け出せない…
カンジダ菌への対策
良さげなカンジダ菌対策を並べてみます。
口腔ケア
歯垢や虫歯に細菌が溜まりやすく、カンジダ菌が増殖する恐れがあるため、
口腔ケアが大事になってきます(*3)。
*3 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4312689/
ココナッツオイル
ココナッツオイルにはラウリン酸、カプリル酸(主に真菌の殺菌)といった殺菌作用がある中鎖脂肪酸が含まれています。
最近では口腔ケアにも使うこともあるようです。
とある研究(*4)ではプロバイオティクスよりも効果があるとか。
また、とある研究ではIBDに有効という研究(*5)もあり、
ココナッツオイルのほとんどの成分が飽和脂肪酸なので
炎症を起こすオメガ6はあまり気にしなくて良いと思われます。
*4 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4808662/
*5 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5821251/
私が使っているのは↓のココナッツオイルです。
砂糖や精製炭水化物を減らす
糖類を利用するカンジダ菌には増殖するための餌になりやすく、
増殖の手助けをしてしまいます。
その中でも分解されやすい砂糖(果糖等も)や精製炭水化物(小麦など)は
やはり影響が大きいようです(*6)。
代わりになるもので言えば、黒砂糖やさつまいもあたりがおすすめです。
*6 https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fmicb.2019.00099/full
水溶性食物繊維(プレバイオティクス)
プロバイオティクスはもちろんのこと、プレバイオティクスも重要になってきます。
善玉菌の増加はpHを下げて、日和見菌(カンジダ菌など)を抑えることができるからです。
ここで取り上げたのは、カプリル酸+ポリガラクツロン酸(ペクチン等の水溶性食物繊維に含まれる)でバイオフィルム状態の除菌に役立つという研究(*7)があったので、ご紹介させていただきました。
また、IBDの水溶性食物繊維については以下記事でも取り上げていますので、
ご参考にしていただければと思います。
IBDに対する食物繊維(プレバイオティクス)の効果と現実的な摂取方法を考える
*7 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5651231/
カンジダサポート
カンジダ菌を抑える効果がありそうなハーブをいろいろ混ぜたサプリです。
にんにくやオレガノオイル等は有名なので、使ってみる価値はありそうです。
まとめ
カンジダ菌対策はお医者様から一度も聞いたことなく、正直なところ初耳でした。
IBD患者で免疫抑制剤を使用している方は対策が必須に思えますね。
過去の記事でも食物繊維(プレバイオティクス)や砂糖を減らしたほうが良いという研究があったのはこのあたりも影響しているようですね。